
認知症
認知症
認知症はさまざまな原因によって脳の神経細胞の働きが悪化することで認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす病気です。認知症にはいくつかの種類があり、アルツハイマー型認知症がそのうち最も多く約半数を占めます。脳内に異常な蛋白がたまり、この蛋白が神経細胞に悪影響を起こすことで生じます。もの忘れで発症することが多く、ゆっくりと進行します。その他には、脳梗塞や脳出血などによって発症する脳血管性認知症、幻視や不随意運動を認めるレビー小体型認知症、スムーズに言葉が出てこなくなり、感情や行動の抑制がきかなくなる前頭側頭型認知症などがあります。
もの忘れは正常な加齢、老化でも認められます。加齢にともなうもの忘れか認知症のもの忘れかの区別は難しい場合がありますが、認知症のもの忘れでは、一部ではなくすべてのことを忘れる、もの忘れの自覚がない、日常生活に支障をきたしているなどの特徴があります。
また高齢者のうつ病も認知症のように見えることもありますし、高齢者の抑うつ症状が認知症の初期症状であったということもあります。
認知症にはいくつかの種類があり、アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症が8割を占めるといわれています。それらに次いで多いのがレビー小体型認知症です。また、年齢に伴うもの忘れと認知症の中間的な段階にある軽度認知障害(MCI)があります。
ものごとを記憶したり、判断したり、順序立てて行うなどの脳の機能を認知機能といいます。認知症は、この認知機能の低下によって、日常(社会)生活に支障が出るようになった状態をいいます。多くの場合、徐々に認知機能が低下して認知症になりますが、認知機能が正常とも認知症ともいえない中間の状態があります。これを「軽度認知障害」と呼びます。もの忘れが目立つものの日常生活には支障がないという状態であり、現在、この軽度認知障害の段階で発見し治療方針を立てることが認知症の診療の重要なポイントになっています。
日本人で最も多い認知症で、全体の6割以上を占めています。アルツハイマー病は1907年にドイツのアロイス・アルツハイマー博士によって報告され、その名がつきました。脳にアミロイドβやタウ蛋白という特殊なたんぱく質が沈着し、それにより正常な脳神経細胞が破壊されることで発症すると考えられています。
アルツハイマー型認知症の進行には以下の3段階があります。
脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害が起きて、その後遺症として認知症になるものです。脳血管障害によって突然認知症を発症したり、小さな脳梗塞(かくれ脳梗塞)がたくさんあることで徐々に認知症が現れたりする場合もあります。障害を起こした部位によって失われる機能や症状が異なります。理解力や判断力は保たれ人格はしっかりしているように見えても、記憶力が低下しているというような「まだら認知症」もみられます。脳血管障害を引き起こす原因となる、高血圧、脂質異常症、糖尿病、心臓病などの生活習慣病を患っていることも特徴です。
レビー小体と呼ばれる異常なタンパク質が脳内に蓄積し、神経細胞の働きを妨げることで発症します。特徴的な症状としては、記憶障害だけでなく、実際にはないものが見える幻視が挙げられます。また、手足の震えや筋肉のこわばり、歩行困難などのパーキンソニズムと呼ばれる運動症状が現れ、日常生活に支障をきたします。さらに睡眠中に悪夢の中で大声を出したり暴れたりするレム睡眠行動異常症や、便秘、立ちくらみを起こす起立性低血圧など自律神経の異常も多く見られます。これら多彩な症状が混在するため、診断と治療には専門的な知識が必要です。
脳の前頭葉や側頭葉が萎縮して機能低下を起こすことにより発症します。比較的若い年齢層、特に40代から60代の方に多く見られ、早期に発症することが特徴です。主な症状は性格や行動の大きな変化で、以前は周囲に配慮があった方が急に無関心や衝動的になったり、感情のコントロールが難しくなったりします。思考の柔軟性が低下し、同じ行動や考えに固執する傾向も強くなります。言葉の理解や表現の障害が現れることもあり、社会生活や仕事に大きな影響を与えることがあります。
当院で行う認知症の検査は症状や患者さまの状態により異なりますが、おおむね下記の流れとなります。
診察
まずはご本人様およびご家族様への丁寧な聞き取りを行います。もの忘れの状況、日常生活の変化、行動の違和感、精神的な変化などについてお伺いし、認知症の可能性や進行度を把握します。初期の認知症ではご本人が自覚されていないことも多いため、ご家族からの情報も非常に重要です。ご家族がご同席される際は気になる症状についてまとめてきていただけると診断の参考になります。また似た症状を示すうつ病やせん妄との鑑別診断も必要なため、心身両面の状態を丁寧に観察します。
身体的検査
認知症の検査では、鑑別診断のために血液検査などの身体検査も行います。
神経心理検査
認知機能障害のスクリーニング検査を行います。質問への回答や作業によって実施される検査であり、一定の基準を下回ると認知症の疑いがあると判断されます。
脳画像検査
当院では近隣の医療機関に頭部CT検査、頭部MRI検査、核医学検査などの撮影を依頼しています。症状によって画像検査の種類は異なります。
再診察
症状、検査結果を基に診療方針を決定していきます。
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