
適応障害
適応障害
日常生活の中で生じる特定のストレスが引き金となって、こころや身体にさまざまな不調があらわれる病気です。ストレスに対する感じ方や環境への順応の仕方は人それぞれ異なるため、同じような状況でもある人には影響がなくても、別の人にとっては大きな心理的負担となり、症状が出現することがあります。
この障害は「病気」として医学的に認められており、ストレス要因が明確であれば、その要因を取り除くことで比較的早期に回復するケースが多いという特徴があります。症状は感情面、身体面、行動面など幅広く、正しい理解と適切な支援が症状の改善と再発予防につながります。
適応障害の症状は、感情、行動、身体の三つの側面に現れます。受けているストレスの内容や本人の性格傾向によって症状の現れ方は異なりますが、以下のような傾向があります。
不安、抑うつ気分、焦燥感、緊張感、怒り、悲しみなどの感情が強くなります。「わけもなく落ち込む」「何事も悲観的にとらえてしまう」といった状態が続くのも特徴です。
無断欠勤や遅刻、飲酒・暴食などの過剰行動、暴力的行動、無謀な運転、けんかなどが見られることもあります。
動悸、息切れ、めまい、胃腸の不調、吐き気、頭痛、腰痛、肩こり、不眠など、自律神経のバランスが崩れたときに見られるような症状があらわれます。「会社や学校に行こうとすると急にお腹が痛くなる」など、状況と結びついた身体の不調として現れることもあります。
これらの症状が2週間以上続く、または日常生活や仕事・学業に支障をきたしている場合は、適応障害の可能性が考えられます。心療内科や精神科への早めの相談・受診をおすすめします。
主に精神科・心療内科での丁寧な問診と診察により診断されます。症状の背景にあるストレス要因や生活環境についての聞き取りや心理検査などを行い、うつ病や不安障害といった他の精神疾患との鑑別診断が中心になります。
身体症状が強く出ている場合には、必要に応じて血液検査などの検査を行い身体疾患が隠れていないかを確認します。
適応障害の治療は、症状の原因となっているストレス環境への対処と、心身の回復を図る支援の両面からアプローチすることが大切です。
まず大切なのは、自分がどのようなストレスを感じているのかに気づき、それを整理することです。そのうえで、可能であればストレスの原因となっている環境から一時的に離れたり、ストレスの程度を軽減したりする工夫が有効です。たとえば職場であれば、上司や人事部門と相談しながら業務の調整をしたり、部署異動や一時的な休職を検討したりすることも選択肢の一つです。
医師や臨床心理士とのカウンセリングを通じて、ストレスに対する感じ方や対処法を一緒に整理していきます。認知行動療法(CBT)などの心理療法を活用し、物事の受け止め方や思考パターン、行動の傾向を見直すことで症状の改善と再発予防を目指します。
不安や不眠、気分の落ち込みが強い場合には、抗不安薬や睡眠薬、必要に応じて抗うつ薬などを使用することがあります。薬物療法はあくまで補助的な治療手段であり根本的な原因への対処にはカウンセリングや環境調整が欠かせませんが、症状を緩和し日常生活を保つための大切な支援となります。
適応障害は、誰にでも起こりうる「こころの反応」であり、特別な人だけがかかる病気ではありません。特に、責任感が強く、まじめで頑張りすぎてしまう人ほど、自分に過度な負荷をかけて発症しやすい傾向があるとされています。
「こんなことで弱音を吐くなんて」と一人で抱え込まず、心や体が発する小さな変化やSOSに、どうか気づいてあげてください。気づきと受診のタイミングが早ければ早いほど、回復への道はぐっとひらけていきます。
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